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令和3年度事業計画を決定

 当協会は、6月8日に開催した理事会において以下のとおり令和3年度事業計画を決定した。

 我が国経済は、新型コロナウイルスの感染拡大防止策を講じながら本格的に回復することが期待されているが、世界的な流行に収束の見通しが立たない中、先行きが見えない状況にある。
 民間消費は力強さに欠け、また住宅投資は着工戸数が4年連続で減少し、令和2年は81万戸に落ち込むなど低迷している。住宅不動産業界にあっては、地価の上昇による事業用地取得難や住宅建築資材価格の高止まりなど厳しい状況が続いているが、中堅事業者においては住宅仕様・設備の多様化、経営の多角化・効率化等により事業を継続・展開している。
 このような中、当協会は、全国1,700社を擁する多様な業態の中堅住宅不動産関係事業者の団体として、脱炭素社会、デジタル改革の推進など社会経済の新しい変化に対応しつつ市場の動向を踏まえながら、良質な住宅不動産の供給のための諸活動を通じて消費者の利益の確保と会員の事業環境の改善に寄与する。
 さらに、新しい住生活基本計画などの最新の住宅不動産業に関連する動向を把握し、適宜会員への情報の提供と周知を図る。
 以上を踏まえ、令和3年度の事業計画を次のとおり定める。

基本方針
1.政策活動・提言
 新型コロナウイルス感染症による影響など住宅市場動向を注視しながら、消費税を含めた住宅取得・保有・譲渡に関する税制の体系、令和4年度住宅・土地税制改正、住宅金融支援機構のフラット35を始めとする融資制度等について提言・要望し、その実現を図る。

2.住宅不動産事業手法等の拡充
 脱炭素化、デジタル化、少子高齢化、世帯構成の変化や生活様式の多様化など社会経済の変化に対応し、また、多発する自然災害に備えるための良質な住宅ストックの形成、既存住宅の流通促進、老朽化マンション対策など住宅不動産の建設、分譲、管理、 流通、建替え等の各分野において、事業手法等を拡大しながら時代に即した取組みを展開する。

3.協会活動の展開
(1) 協会活動の活性化を推進するとともに、協会運営の効率化に努める。
(2) 消費者保護の観点から、相談窓口において消費者等からの相談に対応する。
(3) 会員の人材育成に資するため、階層別・職種別に体系化した協会独自の研修を実施する。

第一 政策活動・提言
1.住宅・土地税制
(1) 住宅・土地に関する税制は、住宅の取得、保有、譲渡の各段階において国税及び地方税が課税され、また、特例軽減措置が講じられていても期限が設けられ2~3年おきに延長が繰り返されている。このような税体系について、購入時の過度な負担を抑えるためにも今後の消費税のあり方を含めて検討を行い、提言・要望を行う。
(2) 住宅ローン減税の延長、住宅取得資金に係る贈与税非課税措置の延長、新築住宅の固定資産税の減額措置の延長、住宅ローン減税等における床面積要件(現行:50㎡以上)の引下げなど令和4年度税制改正へ向けて要望活動を行い、その実現を図る。
(3) 新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い経済対策として講じられた住宅取得支援措置について、市場の状況を踏まえながら、延長・拡大等の要望を行う。
(4) 消費税率引上げによる負担緩和措置として導入された「すまい給付金」等の申請窓口として受付業務を行う。

2.住宅金融
(1) 住宅金融支援機構のフラット35を始めとする融資制度について残価設定型住宅ローンの創設、審査方法、上乗せ金利の引下げ、リバースモーゲージ等の改善要望を行う。
(2) 住宅金融支援機構の融資制度について、同機構と意見交換会を実施する。
(3) 住宅ローンの融資・審査状況について必要に応じて調査を実施する。
(4) ユーザーが幅広い商品の中から適切な住宅ローンを選択できるよう情報を提供する。

3.事業資金融資の円滑化
 民間金融機関による事業資金の供給動向に注視し、必要に応じ、適切に対応する。

4.住宅供給に伴う法規制等への対応
(1) 新しい住生活基本計画を周知するとともに、計画に基づく今後の動向を注視し適切に対応する。
(2) 改正建築物省エネ法の説明義務についての周知を図るとともに、今後の住宅・建築物の省エネに関する動きを注視する。
(3) 所有者不明土地の解消を図るための相続登記の義務化、財産管理制度・共有制度の見直し等を内容とする民法・不動産登記法の改正や土地所有権の国庫帰属化を内容とする新法制定の動きについて周知を図る。
(4) 賃貸住宅管理業の登録制度の創設とサブリース業者等による勧誘・契約締結行為の適正化を内容とする賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律について周知を図る。
(5) 激甚化・頻発化する水災害への対応、デジタル化の推進、地方分権の推進等を目的とする国・地方公共団体の制度の創設・改正について状況を把握し、周知を図る。
(6) 生産緑地に係る2022年問題、無電柱化推進計画についての状況を注視する。

5.国土交通省との懇談会
 国土交通省との懇談会を開催し、同省の最新施策並びに当協会の住宅・土地税制改正要望及び住宅金融支援機構融資制度改善要望等について意見交換を行う。

第二 住宅不動産事業手法等の拡充
1.住宅の商品企画・供給手法等の研究
(1) マンション及び戸建住宅のプラン、性能並びに商品企画に関する事例や、街並みの形成に配慮した分譲住宅の供給手法に関する調査に係る研究、優良プロジェクトの見学会等を行う。
(2) 首都圏における戸建分譲住宅の販売状況調査を引き続き実施し、データの蓄積を行うほか、消費者の求める住宅を的確に把握し、会員の適正な供給計画の立案に資するため、会員への情報提供の充実を図る。

2.全住協いえかるての普及促進等
 「全住協いえかるて」のより一層の普及促進と適切な運営に努めるとともに、(一社)住宅履歴情報蓄積・活用推進協議会の構成団体として、その運営に協力する。

3.長期優良住宅の普及の促進に関する法律等への対応
(1) 長期優良住宅の普及の促進に関する法律の普及に努めるほか、共同住宅の認定基準の合理化、建築行為を伴わない既存住宅の認定制度等の制度改正について周知を図るとともに、円滑な施行に向けて会員への情報を提供する。
(2) 「長期優良住宅化リフォーム推進事業」における子育て世帯向けや補助限度額の加算要件等について周知を図る。

4.環境・健康に配慮した住宅供給の推進
 環境・健康に配慮した住宅供給の推進を図るため、太陽光発電、燃料電池を始め省エネ性能の高い住宅設備機器等について、最新の情報提供を行うほか、認定低炭素住宅、ZEH、ライフサイクルカーボンマイナス住宅(LCCM住宅)等について調査研究を行う。

5.建築物耐震化への対応
(1) 耐震診断・耐震補強工事・建物売却等、得意分野の異なる会員同士が協働して行う建築物耐震化プロジェクトにおいて、東京都における特定沿道建築物を始め建築物の耐震化を促進する事業を引き続き推進するとともに、他の地域への拡大も図る。
(2) 建築物耐震化プロジェクトの活動を踏まえ、耐震化を妨げている要因等に関する行政機関等との意見交換のほか、建物用途に応じた改修工事等の事例研究を行う。

6.住宅瑕疵担保履行法への対応
(1) 住宅瑕疵担保履行法で義務付けられている基準日における届出手続等について会員への周知徹底に努める。
(2) 任意の制度として導入されているリフォーム、既存住宅及び大規模修繕に係る保険制度について会員のニーズに合わせた情報を提供する。

7.不動産流通・リフォーム市場の活性化への対応
(1) 「不動産取引における心理的瑕疵に関する検討会」で取りまとめられるガイドラインの周知を行う等、不動産流通の一層の円滑化に向けて適切な対応をする。
(2) 国の安心R住宅制度に登録された特定既存住宅情報提供事業者団体として制度の普及に努めるほか、全住協安心R住宅制度を適切に運営する。
(3) 不動産流通市場の活性化を一層図るため、既存住宅売買瑕疵保険や取引に関連して行うリフォームの活用に関する調査研究を行うとともに、各種施策に適切に対応する。
(4) インターネットを活用した重要事項説明など、不動産取引のオンライン活用に向けた動向に適切に対応するための調査研究を行う。

8.不動産管理手法等の研究
(1) 世帯構成の変化に伴う単身世帯の増加や、サービス付き高齢者向け住宅の普及など多様化するニーズに対応した賃貸住宅の管理手法、商品企画等について調査研究を行う。
(2) マンション管理に関する各種施策への対応や安全で快適な居住環境の確保に資する管理手法に係る調査研究を行う。

9.住宅不動産に関する情報提供体制
 全住協NETを適切に管理し、不動産ジャパンの情報提供団体としてその運営に協力する。

10.不動産関連事業に関する研究
(1) 判断能力が不十分な人等への配慮・支援及び取引の適正化を目的として創設した不動産後見アドバイザー制度について、引き続き成年後見制度と不動産に関する調査研究を行うとともに、オンラインでも受講可能な本制度を広く周知する。
(2) 所有する不動産を担保に長期生活支援資金等の融資を受けるリバースモーゲージ及び各種信託について、高齢化社会の進展をかんがみ、事例をもとに調査研究を行う。
(3) 空家等対策の推進に関する特別措置法に基づき市区町村が定める空家等対策計画等の最新情報の把握に努めるとともに、その問題の解決に寄与する手法及び事例等について調査研究を行う。
(4) 高齢者等への先進的な居住支援を推進している北海道本別町の居住支援協議会に引き続き参加し、住宅確保要配慮者の実情等について調査研究を行うとともに、他の地域への拡大を図る。
(5) 二地域居住の普及促進と住宅産業のさらなる発展に資するため、「全国二地域居住等促進協議会」に参加する。

11.新規事業に関する研究
(1) 近年頻発する地震、台風、豪雨等により被災した地域に対し、必要な物資を迅速に届ける等の支援を行う仕組みを構築するための調査研究を行う。
(2) 持続可能でより良い世界を目指す国際目標であるSDGs(持続可能な開発目標)に関して、協会として実施可能なものについて調査研究を行うとともに、会員においても取り組めるよう必要に応じて情報を提供する。

第三 協会活動の展開
1.協会活動への参加促進
(1) 経済情勢、市場動向、住宅政策等企業経営に資する講演会等を開催するとともに、意見交換会、情報交換会を通して、会員相互の意思疎通の円滑化を図る。
(2) デジタル社会への変化が加速する中で、会員がより積極的に協会活動に参加できるようオンラインを活用した会合等の開催を促進するとともに、会員間の交流活動を活発化させるための仕組みの構築を図る。
(3) 賛助会員等が会員に対し特別な価格又はサービスで商品を提供する全住協ビジネスネットを充実させるとともに、会員相互の交流を深める。
(4) 会員ニーズを的確に把握するために効率的にアンケート等を実施し、協会運営等に反映させる。

2.不動産取引等の公正化
(1) 消費者保護の観点から、消費者相談窓口において、トラブルの円滑な解決に向けて会員・消費者の双方にアドバイスを行うとともに、インターネットを活用した全住協住まい相談サービス(試行運用)を継続する。
(2) 犯罪収益移転防止法への対応、不動産取引からの反社会的勢力の排除など適正な不動産取引や管理を推進するため、国土交通省、警察庁及び関係団体と協力して適切に対応する。
(3) 宅地建物取引業者が宅地建物取引士を含む従業者に対し行うこととされている適正な業務の実施に係る教育を支援するため、研修会等を開催する。
(4) 不動産取引に関連する個人情報保護法、消費者契約法、金融商品取引法を始め、不動産公正競争規約等不動産関連法令や不動産取引の適正化について周知徹底を図るとともに研修会を積極的に開催する。

3.情報提供及び広報活動
(1) 協会ホームページの改訂について周知を行うほか、会報「全住協」「週刊全住協NEWS」「全住協住宅金融レポート」及び「全住協メールマガジン」等を通じた的確な情報提供に努める。
(2) 会員のメールアドレスの登録を促進し、円滑な情報提供体制を整備する。
(3) 会員の入会状況等について、随時専門紙に情報を提供する。
(4) 住生活月間その他の関連行事への参加等により協会活動の周知を図る。
(5) 住宅不動産に関連する資料の収集整備を行うとともに、会員に情報を提供する。

4.建設現場における労災事故防止
(1) 労働安全衛生法等安全に係る法令に関して、法令勉強会・事例研究会等を開催する。
(2) 東京木造家屋等低層住宅建築工事安全対策協議会等と連携して各種技能者講習会等の開催や情報を提供する。

5.人材育成
(1) 会員の社員のさらなる資質向上や自律的なキャリア形成、能力開発に資するため、階層別・職種別に体系化した研修プログラムを、オンラインも活用しながら実施する。
(2) 会員の宅地建物取引士の増加を促進するため、資格取得に係る講座の負担軽減等の
措置を講ずる。
(3) 中長期的に会員の自社内での人材開発・育成を推進するため、人事・総務担当者等を対象とした勉強会等を開催するとともに、担当者間の交流を図る。

6.協会の表彰
 優良事業表彰を実施し、会員の資質の向上に寄与する。

7.福利厚生
 会員の役職員の福利厚生制度の一つとして、全住協新保障制度の充実に努めるほか、東京不動産業健康保険組合への加入を促進する。

8.宅地建物取引士講習
 宅地建物取引業法第22条の2及び第22条の3に基づく宅地建物取引士講習を実施する。

9.住宅瑕疵担保責任保険法人の認定団体業務
(1) 住宅保証機構㈱、㈱住宅あんしん保証、㈱日本住宅保証検査機構、㈱ハウスジーメン及びハウスプラス住宅保証㈱の認定団体として、住宅瑕疵担保責任保険の申込受付を行うほか、検査員の研修等検査体制の充実その他業務を的確に実施する。
(2) 特保住宅の対象範囲の拡充について検討を行う。
(3) 住宅品質確保促進法に定める瑕疵担保責任の的確な履行を担保し、住宅瑕疵担保履行法に定められた資力確保措置である保険への加入を促進する。

10.指定流通機構制度
 国土交通大臣指定の(公財)東日本不動産流通機構のサブセンターとして、広域的な物件情報の交換を促進し不動産取引の一層の円滑化を図るため、会員(事業所)の管理等指定流通機構の運営に協力するほか、適正な利用を促進するため所要の措置を講ずる。

11.産学協同事業
(1) 明海大学との「不動産学の教育・研究に関する協定」に基づき、インターンシップ制度及び企業推薦特別入学試験制度の利用促進に努める。
(2) 超高齢社会における意思決定支援プログラムの開発について、引き続き東京大学と共同研究を行うとともに、共同研究の一環として成年後見制度に関連する不動産相談窓口業務を行う。
(3) 住宅・不動産事業者におけるSDGsの実現に向けた対応等について、東京大学不動産イノベーション研究センターと連携して活動する。

12.関係団体との連携
(1) 不動産団体連合会、(一社)住宅生産団体連合会の一員としてそれらの構成団体との連携に努め政策要望の実現を図る。
(2) (公社)首都圏不動産公正取引協議会、(公財)不動産流通推進センター、(一財)不動産適正取引推進機構、(公財)東日本不動産流通機構、世界不動産連盟日本支部等関係団体に役員を派遣しその運営に寄与する。

13.関係省庁等との連携
(1) 国土交通省を始めとする関係省庁の住宅不動産業界に関連する施策へ対応するほか、(公社)日本不動産学会ほか不動産関連研究機関及びシンクタンク等との連携に努める。
(2) 国土交通省・東京都等の要請に応じて、研究会等に委員を派遣しその運営に寄与する。