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令和4年度 住宅・土地税制改正要望等を提出

 当協会では、「令和4年度住宅・土地税制等改正要望」「令和4年度住宅金融支援機構の業務に関する要望」を以下のとおり取りまとめ、国土交通大臣ほか関係機関に提出した。

令和4年度住宅・土地税制改正等要望
 我が国経済は、新型コロナウイルス感染症拡大に伴い国内外の諸活動が停滞したことにより、雇用情勢の悪化、所得の減少、消費の減退という悪循環に陥り、日常生活・産業活動のあらゆる場で大きな影響・被害を受けてきました。
 住宅着工戸数を見ると、消費税率の引上げと新型コロナウイルス感染症拡大が重なり、一昨年から減少傾向が続いています。在宅勤務などによる新しい需要もあり、やや持直しの徴候もありますが、昨年に比べて数字が改善しているのは、昨年の供給戸数が大幅に落ち込んでいたことによるところが大きいと考えられます。
 住宅市場を取り巻く環境は建築費、土地価格などの高止まり、最近のいわゆるウッドショックによる木材の高騰・確保難など厳しい状況が続いており、また自然災害対策、老朽化マンションの建替え、デジタル化・IoTへの対応、二拠点居住の推進、リバースモーゲージの普及など多くの課題をかかえています。併せて、ライフスタイルの変化に応じた住替えを可能とする良質な住宅ストックの確保と既存住宅の流通促進、脱炭素社会に向けた住宅の省エネルギー化の推進が重要な課題となっています。
 住宅は、国民に生活の場を提供するとともに内需主導の持続的な経済成長を下支えする重要な役割を担っており、住宅の一次取得者層を始め消費者が良質な住宅を取得するためには、さらなる支援措置が必要であると考えられます。
 具体的には、令和4年度へ向けての対策として、住宅市場を活性化し消費者の求める住宅供給を推進し、良質な住宅ストックの形成、住まい方の多様化への対応、脱炭素社会実現の推進等を図るため、住宅ローン減税、贈与税非課税措置などの税制を始め、助成制度、認定制度、規制等について以下の事項を要望します。
 併せまして、住宅にはその取得、保有、譲渡の各段階において多くの税が課せられ複雑な税体系となっております。国税及び地方税の住宅税制の抜本的な見直しについて継続的な検討をお願いいたします。

第一 住宅取得の促進
1.住宅ローン減税及びすまい給付金制度の延長
 住宅借入金等を有する場合の所得税の特別控除(期限:令和3年12月31日)について、幅広い所得層が公平に税制措置を受けられるよう控除期間に重点を置くなど再編の上で継続。併せて、すまい給付金制度を継続

2.贈与税の非課税措置の継続
 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置(期限:令和3年12月31日)の継続

3.固定資産税の減額措置の延長
 新築住宅に係る固定資産税の減額措置(期限:令和4年3月31日)の延長
 ・一般の住宅:3年間 税額2分の1減額
 ・中高層住宅:5年間 税額2分の1減額

4.登録免許税の特例措置の延長
 住宅用家屋に係る登録免許税の特例措置(期限:令和4年3月31日)の延長
 ・所有権保存登記 本則:1000分の4 ⇒ 特例:1000分の1.5
 ・所有権移転登記 本則:1000分の20 ⇒ 特例:1000分の3
 ・抵当権設定登記 本則:1000分の4 ⇒ 特例:1000分の1

5.不動産の譲渡等に関する印紙税の特例措置の延長
 不動産の譲渡契約書及び工事請負契約書に係る印紙税の特例措置(期限:令和4年3月31日)の延長
 ・500万円超~1,000万円以下 本則:1万円 ⇒ 特例:5千円
 ・1,000万円超~5,000万円以下 本則:2万円 ⇒ 特例:1万円
 ・5,000万円超~1億円以下 本則:6万円 ⇒ 特例:3万円
 ・1億円超~5億円以下 本則:10万円 ⇒ 特例:6万円
 ・5億円超~10億円以下 本則:20万円 ⇒ 特例:16万円

6.不動産取得税の特例措置の延長
(1) 新築住宅用の土地に係る不動産取得税の特例措置(期限:令和4年3月31日)の延長
 ・特例措置:住宅の床面積(200m2を限度)の2倍相当額を減額
 ・土地取得から住宅新築までの期間要件
  本則:2年 ⇒ 特例:3年(※一定の事情がある場合は4年)
  ※100戸以上の共同住宅等で、やむを得ない事情があると都道府県知事が認める場合

(2) ディベロッパー等に対する新築家屋のみなし取得時期の特例措置(期限:令和4年3月31日)の延長
 ・本則:6か月 ⇒ 特例:1年

7.居住用財産の買換え等に係る特例措置の延長
(1) 特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例(期限:令和3年12月31日)の延長
 ※所有期間10年超、居住期間10年以上の居住用財産を譲渡し、新たに一定の居住用財産を取得した場合
 ・譲渡価額が買換資産の取得価額以下のときは、課税されない。
 ・取得価額を超えるときは、超える額に長期譲渡所得課税が行われる。

(2) 居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除制度(期限:令和3年12月31日)の延長
※所有期間5年超の居住用財産を譲渡し、住宅借入金等を利用して新たに一定の居住用財産を取得した場合は、譲渡損失の金額についてその年の損益通算及び翌年以後3年内の繰越控除が認められる。 

(3) 特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除制度(期限:令和3年12月31日)の延長
※住宅借入金等を有する所有期間5年超の居住用財産の売却に伴い発生した譲渡 損失のうち、住宅ローン残高が譲渡対価を超える場合、その差を限度として、その年の損益通算及び翌年以後3年内の繰越控除が認められる。

第二 良質な住宅ストックの形成
1.認定住宅に係る特例措置の延長
(1) 認定長期優良住宅、認定低炭素住宅を新築等した場合の所得税額の特別控除(期限:令和3年12月31日)の延長
 ・控除額:最大65万円

(2) 認定長期優良住宅に係る特例措置(期限:令和4年3月31日)の延長
  [固定資産税(2分の1減額の特例期間)]
 ・一般住宅:3年 ⇒ 5年
 ・中高層住宅:5年 ⇒ 7年
  [登録免許税(税率の軽減)]
 ・所有権保存登記:一般住宅特例 1000分の1.5 ⇒ 1000分の1
 ・所有権移転登記:一般住宅特例 1000分の3 ⇒ 戸建住宅 1000分の2
                      ⇒ 中高層住宅 1000分の1
  [不動産取得税(課税標準からの控除額)]
 ・一般住宅特例1,200万円 ⇒ 1,300万円控除

(3) 認定低炭素住宅に係る特例措置(期限:令和4年3月31日)の延長
  [登録免許税]
 ・所有権保存登記:一般住宅特例 1000分の1.5 ⇒ 1000分の1
 ・所有権移転登記:一般住宅特例 1000分の3 ⇒ 1000分の1

2.既存住宅の増改築等に係る特例措置の延長
(1) バリアフリー改修、省エネ改修、多世帯同居改修など特定の増改築等に係る住宅ローン控除の特例措置(期限:令和3年12月31日)の延長
 ・控除額:最大12.5万円   ・控除期間:5年間
(2) 耐震改修・バリアフリー改修・省エネ改修・多世帯同居改修など特定の改修工事をした場合の所得税の特別控除(期限:令和3年12月31日)の延長
 ・控除額:最大105万円
(3) 既存住宅の耐震改修、バリアフリー改修、省エネ改修、長期優良住宅化リフォームに係る固定資産税の減額措置(期限:令和4年3月31日)の延長
 ・耐震改修:2分の1減額  ・バリアフリー改修:3分の1減額
 ・省エネ改修:3分の1減額  ・長期優良化リフォーム:3分の2減額

3.買取再販に係る登録免許税の特例措置の延長
 買取再販で扱われる住宅の取得に係る登録免許税の特例措置(期限:令和4年3月31日)の延長
 ・所有権移転登記:一般住宅特例 1000分の3 ⇒ 1000分の1

4.マンション建替え・敷地売却事業に係る特例措置の延長 
(1) マンション建替法に規定する施行者又はマンション敷地売却組合が取得する要除却認定マンション及びその敷地に係る不動産取得税の非課税措置(期限:令和4年3月31日)の延長

(2) マンション建替事業の施行者等が受ける権利変換手続き開始の登記等に対する登録免許税の免税措置(期限:令和4年3月31日)の延長

5.マンションの老朽化を防止するための特例措置の創設
 マンションの大規模修繕の計画的実施を図るため、適正な修繕積立金について一定額を所得税から控除するなど特例措置の創設

6.住宅の解体費用を補助する制度の創設
 防災性や省エネ性が劣る住宅の建替えや災害危険区域からの移転のための家屋の解体費用を補助する制度を創設する。

第三 住まい方の多様化への対応
1.住宅ローン減税制度等における床面積要件の緩和
 世帯構成の変化、職住近接等の利便性を重視する志向等に対応するため、住宅ローン控除、すまい給付金、贈与税の特例、不動産取得税の特例、登録免許税等の軽減措置などの床面積要件を緩和(50m2以上⇒40m2以上)

2.二地域居住のための特例措置の創設
 地方における交流人口の増大、大都市郊外住宅地の再生、空き家の有効活用等により地方創生を推進するため、一定の要件を満たす二戸目の住宅取得に対し、住宅ローン減税制度を適用するなど優遇措置を創設

3.既存住宅の評価の適正化
 利用可能な空き家の購入資金の調達、リバースモーゲージや残価設定ローンなど住宅ローンの多様化等を図るため、平成26年3月に策定された「中古戸建てに係る建物評価の改善に向けた指針」を踏まえて、不動産業界と金融業界に共通した建物価格を適正に評価するガイドラインを作成

4.空き家対策推進のための特例措置の創設
 所有者が空き家を取壊し後一定期間以内にその敷地を活用する場合、固定資産税の住宅地特例(課税標準を6分の1又は3分の1に減額)を継続して適用

5.良好な街並み維持に資する相続税の特例措置の創設
 住宅地における良好な街並みを維持するため、相続した住宅を引き続き、居住の用に供する場合に、その住宅及びその敷地について相続税を非課税又は徴収猶予

6.借入金利子の損益通算の特例措置の改善
 個人による土地取得の借入金利子について、不動産所得の損益通算制限を廃止

第四 脱炭素社会への対応
1.省エネに対する理解・意識の向上と弾力的な規制強化
(1) 住宅のCO2排出の実態、対策の必要性、住宅省エネの効能等について消費者に分かりやすい情報の提供
(2) 2030年、2050年に向けての工程(ロードマップ)の提示・周知徹底
(3) 省エネ基準適用義務化・基準の強化等に際しては、段階的・弾力的な対応の実施

2.支援措置の拡充
(1) 省エネ対応のための費用負担を軽減するため、住宅ローン減税制度における控除率の上乗せ、控除期間の延長など税制措置の拡充及び融資・補助の拡充
(2) ZEHに係る助成の拡充
(3) 太陽光発電設備の設置を促進するため、建築物の高さ・容積率規制、緑化・駐車場設置規制の緩和等(設置の義務化は時期尚早)
(4) 創エネについての弾力的運用(敷地外での創エネの算入)

3.制度の整理統合と手続きの合理化
(1) 省エネ基準、性能評価、長期優良住宅、ZEH、BELSなどの制度の整理統合及び計算方法の簡略化
(2) 審査機関、行政等の手続きの迅速化・簡略化・一本化

4.既存住宅の建替え集約化による省エネの推進 
 既存住宅の省エネ基準適合化を図るため、複数の既存住宅を集約して省エネ基準を満たす住宅に建て替える制度を創設
・居住誘導地域に集約することによりコンパクトシティの推進に寄与

第五 当面の経済の活性化
1.住宅ローン減税特例措置及びすまい給付金の延長
 令和2年12月の経済対策で講じられた住宅ローン減税の特例措置(契約期限:令和3年9月末又は11月末、入居期限:令和4年3月末)及び住まい給付金制度の延長
[適用要件]
 ・契約期限:注文住宅 令和3年9月末
       分譲住宅   同 11月末
 ・入居期限:令和4年3月末
[特例措置の主な内容]
 ・控除期間:13年
 ・面積要件:年間所得1,000万円以下の場合40m2以上

2.贈与税の非課税措置の特別枠の延長
 令和2年12月の経済対策で講じられた贈与税の非課税措置(期限:令和3年12月末)の延長
[特例措置の主な内容]
 ・一般住宅:1,000万円   ・省エネ等住宅:1,500万円
 ・面積要件:年間所得1,000万円以下の場合40m2以上

3.グリーン住宅ポイント制度の継続と拡充
 グリーン住宅ポイント制度の継続と拡充(国産材の活用等の場合のポイント付加)

令和4年度住宅金融支援機構の業務に関する要望
 我が国経済は、新型コロナウイルス感染症拡大に伴い国内外の諸活動が停滞したことにより、雇用情勢の悪化、所得の減少、消費の減退という悪循環に陥り、日常生活・産業活動のあらゆる場で大きな影響・被害を受けてきました。
 住宅着工戸数を見ると、消費税率の引上げと新型コロナウイルス感染症拡大が重なり、一昨年から減少傾向が続いています。在宅勤務などによる新しい需要もあり、やや持直しの徴候もありますが、昨年に比べて数字が改善しているのは、昨年の供給戸数が大幅に落ち込んでいたことによるところが大きいと考えられます。
 住宅市場を取り巻く環境は依然として建築費、土地価格などの高止まり、最近のいわゆるウッドショックによる木材の高騰・確保難など厳しい状況が続いており、住宅の一次取得者層を始め消費者が良質な住宅を取得するためには、さらなる支援措置が必要であると考えられます。
 住宅は、国民に生活の場を提供するとともに内需主導の持続的な経済成長を下支えする役割を担っています。つきましては、良質なストックの形成に向けて金融面から政策的に誘導することが極めて重要であり、以下のとおり住宅投資の拡大を図る観点からフラット35、リフォーム融資など、融資制度の一層の拡充、運用の改善をお願い申し上げます。

第一 制度の拡充
1.返済比率の緩和
 年収に占める年間合計返済額の割合(総返済負担率)を緩和する。
 ・400万円未満 (現行)30%以内 ⇒(要望)35%以内
 ・400万円以上 (現行)35%以内 ⇒(要望)40%以内

2.まちづくり融資制度の拡充
 住宅・不動産市場活性化のための緊急対策及び経済危機対策で措置されていた「有効空地確保事業」を融資の対象とする。

3.フラット35の9割超融資の上乗せ金利の引下げ等の実施
(1) フラット35の9割超融資の上乗せ金利(+0.26%)を引き下げる。
(2) 上乗せ金利は9割超の部分に限定し、9割以下の部分には元の金利(上乗せしない金利)を適用する。

4.住宅の規模要件の緩和
 一戸建て住宅等の規模要件(現行:70m2)を緩和する。

5.借地権付き住宅への対応
 地主の承諾書がある場合、底地へ抵当権設定なしで一戸建て住宅等の借地権部分を全額融資の対象とする。

6.借入対象費用(諸費用)の拡充
 引越費用、家具家電の購入費用、住宅履歴情報の登録費用等について、借入対象となる住宅の費用に追加する。

7.土地購入費用の事前実行
 土地を購入して注文住宅を建てる場合、一定の要件のもと、土地購入資金もフラット35
借入れできるが、建物完成後に土地購入資金が実行されるため、土地の決済時につなぎ融資を利用するケースが多い。建物完成前であっても、土地購入資金を実行する。

8.フラット35Sの金利優遇幅の拡大等
 フラット35Sの金利優遇幅を拡大するほか、金利優遇期間を延長する。また、省エネ性能が高い住宅の場合、フラット35Sを超える金利優遇を行う。

9.リフォーム融資の拡充
 一定の省エネ改修工事を行った場合、耐震改修工事を行わなくてもリフォーム融資の対象とする。

10.リバースモーゲージの普及の促進
 機構が提供するリバースモーゲージ型住宅ローン及び機構の住宅融資保険を活用した民間金融機関が行うリバースモーゲージ型の住宅ローン(建設・購入資金)について、一層の普及の促進を図るほか、「残価設定型住宅ローン」など多様な住宅ローンのあり方について検討を深める。

第二 運用の改善
1.フラット35の融資率9割を超える場合の審査の改善
(1) フラット35の融資率9割を超える場合、より慎重に審査を行うこととなっているが、9割以下の融資の場合と同様の審査とする。
(2) 取扱金融機関による仮審査の結果が「留保」という曖昧な回答となることがあり、住宅購入者に明確に説明ができるように改善する。

2.産休・育休者に対しての審査の改善
 産休・育休者の収入の取扱いについて、産休前の収入又は復職後の見込み収入等を勘案し、産休・育休者の収入を加算する。

3.年収の審査方法の改善
 年初の1~3月の申込みの場合、現行制度では前年収入ではなく前々年の収入となるため(年度切替えの審査のため)、前年の収入(源泉徴収票等)による審査に改める。

4.フラット35の申込者要件の弾力的な運用
 永住許可を受けていない外国人にも、日本在住期間、勤続期間、自己資金比率、保証人(日本人)等の条件を付して、フラット35の利用を可能とする。

5.申込書類、手続き等の一層の簡素化
(1) 事前審査から金銭消費貸借契約までの手続きを全てオンラインで完結するようにしていただきたい。
(2) 金融機関によって異なる必要書類を統一する。
(3) 物件の契約等で引渡しまでの期間が短い場合は、全ての書類が揃わなくても、条件付きの審査を可能とする。

6.適合証明書の取得費用の引下げ
(1) フラット35適合証明書の取得費用を引き下げる。
(2) 住宅性能表示制度を利用している場合、適合証明書の交付手続きを省略できるようにする。

7.兄弟姉妹による連帯債務等について
 兄弟姉妹による連帯債務・購入物件の共有を認める。

8.個人信用情報によるローン否決に対する緩和措置
 携帯電話代金、オートローン、奨学金等の支払い遅延等による場合の審査基準を緩和する。