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全住協リーダーに聞く~協会の課題と指針 (3)秋田県住宅宅地協会 佐々木克巳理事長



秋田県住宅宅地協会 佐々木克巳理事長

 住宅・不動産業界紙2紙による特別企画「全住協リーダーに聞く~協会の課題と指針」より、全住協を構成する全国の主要団体長と主要委員会の委員長のインタビューを随時掲載いたします。今回は、秋田県住宅宅地協会(秋田県宅協)の佐々木克巳理事長((株)むつみワールド代表取締役社長)。市場特性や新型コロナウイルス感染症の影響、今後の協会活動などを聞きました。

―協会の成立ちは
 「1972年に秋田県住宅造成協会として発足した。当時は、田中角栄氏の『日本列島改造論』が政策になったように、地方へ産業と文化と自然とが融合した地域社会を広め、全国をネットワークで結ぶという壮大な構想があり、それを受けて開発分譲が盛んに行われていた。ただ、残念なことに乱開発による低品質な分譲地なども散見されていた。そこで低廉良質な宅地・住宅を供給し、業界の地位向上と需要者保護を推進しつつ公共の福祉に寄与することを目的に設立された」
 「1985年に現協会名に変更した。現状、高齢化・少子化が全国一進んでいる秋田県では、新規の開発分譲を抑制し、再開発にシフトしていくことが求められている。現在、会員7社、顧問1名で新しい取組みを目指している」

―秋田県の不動産市況は
 「18年連続で日本一安価な地価となり、全国に多少けん引してもらう形で、昨年からは秋田空港付近の地価が少し上昇してきた。しかし、郡部は需要が弱いため35~40年前の地価に戻ってしまった。一昨年に施行された秋田市立地適正化計画においては、現在の街を活かしながらコンパクトシティを標榜して地域が設定されたが、昨今の自然災害により浸水地域が多く含まれているため、今後見直しが必要になるだろう」

―新型コロナウイルス感染症の影響はどうか
 「2、3月はほとんど影響がなかったが、4月に入り、賃貸や売買、建築の現場では集客が半減し、建築部材は納期未定などが見られた。6月ぐらいまでは影響があった。賃料の減額請求、雇用の流動化などが出てきているが、今後の懸念は自死者の増加だ。秋田県は長年、自死者の全国ワーストワンであり、官・民・学・医などの連携で、改善されてきたが、秋口から来春までは注意が必要だろう。この点は入居者など顧客管理に関して注視しておきたい」

―こうした状況下で、今後の活動の方向性は
 「新型コロナの収束はまだ見込めないので、共存せざるを得ないと思う。問題は、罹患しても重症化しないような健康な状態をどのように作り上げるかだ」
 「新築、中古+リノベーションにおいては、地域に合わせた素材を使用しながら省エネ性・耐震性・デザイン性に配慮した供給を促進していく。また、高齢社会への対応や空き家予備軍への対策として、〝終活〟に関して会員と共に学びながら、事前に活用策などを本人や相続人も検討できる機会を多く作っていく」

―産官学民による連携の考え方について
 「人口減少時代において、それぞれが単独でなせるものではない。働く場の情報提供・働きやすい環境の整備・子育てのしやすさと環境整備・100年人生を見据えた人生設計など、アフターコロナ・ウイズコロナにより、今までのスキームではなし得ない環境になってきた。これは、地方から見ると負け組とみられていたところが、逆転があり得る環境になってきたとも言える。インターンシップだけでなく各大学との共同研究も視野に入れながら、若い人たちの知恵を活かした街づくりやリノベの実践なども行っていきたい」

―協会活動の課題や政策要望について
 「会員数の増強が第一の課題だ。行政との連携をさらに図り、都市計画関連について会員相互で学び、再開発を手掛けていきたい」
 「政策要望に関しては、東京を筆頭とする一極集中の見直しは必要ではないか。また、治山・治水・交通などのインフラへの投資を積極的に行い、安心して暮らせる環境整備が大切だ。新型コロナで流動化した働き手の受け皿として、土木・農業・林業などの仕事を安定的に整えることで、企業も安心して投資できる。また、教育面では、日本の歴史・伝統・文化を伝えつつ、自国に誇りを持てるように取り組んでいくことが大切だ。そして世界的なビジョンを描き、世界をけん引していくリーダーを育成していくプログラムが必要だ」