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全住協リーダーに聞く~協会の課題と指針 (4)戸建住宅委員会 山田照委員長



戸建住宅委員会 山田照委員長

 住宅・不動産業界紙2紙による特別企画「全住協リーダーに聞く~協会の課題と指針」より、全住協を構成する全国の主要団体長と主要委員会の委員長のインタビューを随時掲載いたします。今回は、戸建住宅委員会の山田照委員長(山田建設(株)代表取締役社長)。市場動向や運営方針などを聞きました。

―新型肺炎の影響が拡がっている。国内の住宅市場をどうみる
 「東京では都心だけでなく郊外の戸建住宅も売れている。住宅市場は当面、過熱もクラッシュもせず、今のように安定して売れるという状態が続きそうだ。旅行にも出づらく自宅にこもる傾向が強まっており、今よりも良い家が欲しいという人が増えている。一方で景気悪化への不安から住宅購入をためらう向きもあるが、売行きがそれほど悪くなることはないだろう。」

―消費者の目線は具体的にどう変化しているか
 「立地については都心の駅に近い物件は引き続き人気だが、コロナ禍で横浜や川崎、松戸や柏、大宮などの住宅も売れ始めており、市場が拡がった。ただ拡がったといっても都心まで1時間程度の通勤圏内だ。商品企画では、例えばリビングに仕事や勉強に使えるカウンターを付けると反応がいい。」

―住宅産業の潮目が変わりつつある。委員会の運営方針は
 「変化のスピードが速まっており、半年で商品の傾向が変わる。特に戸建住宅は工期が短く、変化に対応できなければ勝ち残れない。様々な業界の問題に、即時的に対処していくことも重要だ。自分が委員長として会員を引っ張るというよりも、会員の意見を丁寧に聞きながら問題の解決を図りたい。年内に首都圏の会員に聞取りを行い、困り事や成功事例などを共有することにしている。」
 
―今、戸建住宅は売れている。複数の成功事例がありそうだ
 「最近ではテレビ会議システムなどを活用したリモート営業がうまくいっているという話をよく聞く。会員には大手IT企業もいる。知恵を出し合いながら販売促進につなげたい。最近は戸建住宅専業よりもIT関連など周辺産業の会員が増えつつある。異分野の会員と協力するチャンスが拡がっている」

―委員会の役割と存在意義をどう考える
 「戸建住宅とマンションは住宅産業の2本柱であり、その意味でも重要な組織だと思っている。住宅業界は参入障壁が比較的低いため、様々な企業が新規参入することが可能。委員会のメンバーで有益な取組みを共有し、事業活動のレベルを底上げしたい。そのことが業界全体のレベルアップにつながると思う。」

―会員が供給した住宅の図面や補修履歴などを一元管理する「全住協いえかるて」の普及を進めている
 「運用開始から約10年が経過するが、もっと利用会員数を伸ばしたい。会員が供給した住宅の履歴をお客様専用サイトに蓄積するためのシステム利用料は月額2万5000円(消費税別)だが、これを来年3月まで無料にするキャンペーンを始める。住宅の履歴をたどれれば維持管理が合理化され、ひいては供給される住宅の質が高まる。そのことを売り手と買い手の双方に知ってもらいたい。」

―コロナ禍で経営危機に陥る会員企業も増えそうだ。協会、委員会としてどう支援する
 「不動産の事業には大きな資金が必要であり、いったん経営危機に陥ると融資が付きにくくなるため次の仕事ができなくなる。資金の回転が止まると何もできない。危機になる手前でそれを阻止するという役割を果たしていきたい。」

―委員会活動の目標について
 「今のように市場動向が目まぐるしく移り変わる時代には、即時即応の力が要求されてくる。その時代その時代に要求されている商品や性能を会員企業で情報共有し、変化に対して機動的に対応できる体質を作っていきたい。」

―委員長として取り組みたい活動は
 「一番は首都圏以外の会員との交流だ。協会活動は首都圏の会員を中心に展開しているのが現状であり、首都圏以外の会員の声が十分に反映されているとは言いがたい。例えば再来年には生産緑地の指定が解除されるが、平野が狭く住宅地に適する土地が少ないエリアとそうでないエリアとでは異なる影響が生じると予想される。その土地その土地で地域特有の課題を聞き、委員会活動に反映していきたい」