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令和6年年頭所感

一般社団法人 全国住宅産業協会
会長 馬 場 研 治

 謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
 私たちの社会経済活動に甚大な影響を与えた新型コロナウイルス感染症は、昨年5月に感染症法に基づく分類が「5類」に緩和され、様々な制限・制約のない日常が戻り、着実に収束への道を歩んでいると思います。
 経済状況を見るとインバウンド需要の回復など好転の兆しはあるものの、長期化するロシアのウクライナ侵攻に加え、イスラエル・ハマス紛争の影響もあり、エネルギー、食料を始めとしてさらなる物価上昇が懸念されます。さらに賃金の上昇分がインフレ率を下回り、引き続き実質所得水準が低下傾向にあり、景気の回復を実感することができない状況が続いております。また、住宅・不動産市場においては、慢性化した建築コストの高騰と事業用地の取得難などから今後も住宅価格の上昇は不可避的であり、住宅取得環境は厳しい状況が続くものと予想されます。
 こうした状況の中、令和6年度税制改正大綱では住宅ローン減税の子育て世帯等への借入限度額の維持及び床面積要件の緩和措置の継続、住宅取得資金に係る贈与税非課税措置の延長、新築住宅に係る固定資産税の減額措置の延長、土地の固定資産税・都市計画税の負担調整措置の延長、買取再販で取り扱われる住宅の取得に係る登録免許税の特例措置の延長、既存住宅の増改築等に係る特例措置の延長・拡充などが実現いたしました。これらの措置は、住宅取得者の負担軽減や既存ストックの流通促進・利活用に寄与するものであり、ご尽力いただいた国会議員、国土交通省など関係の方々に深く感謝申し上げます。
 とりわけ住宅ローン減税の床面積要件の緩和措置の継続については、当協会として最重点項目として位置づけ多くの国会議員に要望活動を展開しました。2000年に27.6%だった1人世帯の総世帯数に対する割合は、2020年には38.0%となり、1人世帯、2人世帯の合計は全体の3分の2を占めております。床面積要件の40m2以上への緩和継続は、都心居住の利便性や職住近接などを求める共働き世帯や子育て世帯、単身世帯などの多様なライフスタイルの実現に資するものと思います。
 また、令和5年度補正予算では、物価高騰の影響を受けやすい子育て世帯・若者夫婦世帯による高い省エネ性能を有する新築住宅の取得や住宅の省エネ改修等を支援する「子育てエコホーム支援事業」が創設されました。当協会としても2050年のカーボンニュートラルの実現のために、積極的に環境性能が高い住宅の供給に努めてまいります。さらに住宅金融支援機構では子供の人数に応じて金利を引き下げる【フラット35】子育てプラスを2月からスタートさせます。こうした税制・金融・補助により新たな住宅需要を喚起し、住宅・不動産業界が活性化することが期待されます。
 住宅・不動産業界は、人口・世帯数減少に伴う空き家や所有者不明土地の増加、長期優良住宅やZEHの普及促進、高度成長期に大量供給された住宅団地の再生、老朽化するマンションの管理・建替え、自然災害対策、時代に合った用途規制の見直し、多様化する居住ニーズへの対応、不動産DXの普及促進、既存住宅の流通促進など本年も多くの課題に直面しております。当協会は大都市から地方都市まで全国をつなげるネットワークを活かし、本年もこうした課題に全力で取り組み、良質な住宅の供給と豊かな住環境の創造に努めてまいります。
 最後になりましたが、令和6年は甲辰(きのえたつ)の年です。「甲」は草木の生長を表し、植物がどんどん生長するように勢いを増していく意味があります。昨年までの努力してきたことが実を結んで成就し、本年が飛躍の一年になりますよう皆様方のますますのご発展とご健勝を祈念申し上げます。