mainvisual

平成27年の低層住宅労災件数は428件で前年下回る
~住団連、低層住宅の労働災害発生状況

 (一社)住宅生産団体連合会は、「平成27年低層住宅の労働災害発生状況報告書」をまとめた。調査対象は同連合会構成団体のうち6団体の会員企業。低層住宅建築工事において現場災害の発生状況を調査し、529社が回答した。この529社の年間完工棟数は、新築が15万9284棟、増改築・リフォームが31万5261棟。同報告書は、平成5年から低層住宅建築工事による労働災害発生状況を集計分析している。

 同調査の概要は次のとおり、[労働災害件数(休業4日以上の災害で、一人親方や事業主災害等を含む)]=428件で前年(522件)に比べて94件減少している。工事1000棟当たりの労働災害発生率は0.87件で前年(0.94件)と比べ0.07件減少。労働災害発生状況では[作業分類別]=発生率の高い「建方工事」が前年の23.2%から24.3%へ増加したが、「内部造作工事」が同20.8%から15.2%へ減少した。両作業での合計39.5%は、前年比4.5%減少した。「内装工事」は同2.7%から7.9%へと大幅に増加し、平成25年(8.1%)と同様な発生率となった。

 [職種分類別]では、「大工職」の労働災害発生率は45.3%で前年の41.6%から増加し、「その他」が同32.0%から28.5%へ減少したが依然高い発生率で推移している。「その他」の職種の大半は一現場で継続しての作業ではなく、各現場を巡回する職種のため、その現場の作業環境に不慣れなことによる労働災害が発生しやすくなる。初めての現場に入るときは、足場掛状況、現場の整理整頓状況、資材搬入のための通路状況等の把握を行うことの普及啓発が必要である。

 労働災害発生状況では、[原因・型別]=墜転落災害が49.1%とほぼ半数を占め、そのうち「足場」「脚立」からの転落が46.2%となっている。「足場」からの墜転落は平成25年24.8%→同26年22.0%→同27年21.4%と減少傾向だが、「脚立」からは平成25年15.7%→同26年24.0%→同27年24.8%と増加傾向となっている。工具での切れやこすれは、「丸鋸」は30.2%(前年比3.3%増)、「釘打ち機」は24.4%(同1.3%増)と前年の減少から再び増加し、「グラインダー」が平成25年5.6%→同26年13.5%→同27年15.1%と増加傾向を示している。「その他」が前年比5.2%減少し19.8%となった。

 [休業日数別]=全年比で休業日数が「4~7日」は9.6%(前年比3.2%減)と減少したが、「8~30日」40.7%(同4.5%増)と増加となり、労働災害の重篤化による休業日数の長期化の傾向を示している。発生比率が高い『転倒災害』『墜転落災害』『電動工具災害』について、元請業者・事業主が協力して労働者に災害防止の重要性について常に自覚を持つように、繰り返し安全衛生教育を実施しなければならない。

 [雇用形態別]=「労働者」が49.3%(前年比10.1%減)、「事業主」が8.4%(同3.4%増)、「一人親方」が41.8%(同6.7%増)と、「労働者」の割合が過去10年で最低になるとともに、「事業主」、「一人親方」の割合は過去10年で最高となった。[年齢別]=50歳代以上が42.8%(前年比8.7%増)と前年より増加している。40歳代以上は全体の65.7%と過半数を占め、特に60歳代以上が26.2%(同6.9%増)と全体の1/4を超える状況。今後も低層階住宅工事に携わる作業者の高年齢化が早期に改善される見込みが薄いため、さらに高齢者の災害発生比率の増加が懸念される。

 [月別・曜日別・時間別]=「月別」:2月が10.5%(前年比1.9%増)、9月が11.7%(同5.0%増)・10月が9.6%(同3.7%増)・12月が8.9%(同2.2%増)と災害発生率が増加した。工事が集中する年度末および年末完工の繁忙が推察される。また、年々早期の熱中症対策が必要となっており、7月が8.4%(同0.8%減)、8月が9.6%(同0.7%減)、9月が11.7%(同5.0%増)の夏季における災害発生の増加傾向が現れている。

 「曜日別」:金曜日が15.2%(前年比1.7%減)で微減、木曜日が15.0%(同3.2%減)で減少したが、火曜日が20.6%(同2.4%増)と土曜日が15.0%(同0.2%増)で2年連続の増加。また日曜日が3.5%(同1.4%増)で増加した。火曜日の災害発生率が最も高いが、曜日別の災害発生率の差は少なくなり、日曜日を除く平準化の傾向が見られる。「時間帯別」:前年と比較すると午前中の災害発生率が高く、午後は低下傾向が見られた。災害が増加傾向を示した午前中の作業を考え合わせると、作業前の「準備不足」、昼休み前の作業者に見えない「疲れ」や「油断」に対しての認識・配慮が重要としている。

〔URL〕http://www.judanren.or.jp/proposal-activity/chosa/file/h27_roudousaigai.pdf
【問合先】工事CS・安全委員会03―5275―7251