mainvisual

平成28年の低層住宅労災件数は487件で前年上回る~住団連、低層住宅の労働災害発生状況

 (一社)住宅生産団体連合会は、「平成28年低層住宅の労働災害発生状況報告書」をまとめた。調査対象は同連合会構成団体のうち6団体の会員企業。低層住宅建築工事において現場災害の発生状況を調査し、479社が回答した。この479社の年間完工棟数は、新築が20万3207棟、増改築・リフォームが37万901棟。同報告書は、平成5年から低層住宅建築工事による労働災害発生状況を集計分析している。

 同調査の概要は次のとおり、[労働災害件数(休業4日以上の災害で、一人親方や事業主災害等を含む)]=487件で前年(428件)に比べて59件増加している。工事1000棟当たりの労働災害発生率は0.83件で前年(0.87件)と比べ0.04件減少。労働災害発生状況では[作業分類別]=発生率の高い「建方工事」が前年の24.3%から18.9%へ減少したが、「内部造作工事」が同15.2%から20.6%へ増加し、「内装工事」も同7.9%から11.5%へ増加しいずれも発生率が高くなっている。

[職種分類別]では、傾向は概ね例年と同じで、「大工職」の労働災害発生率は前年の45.3%から42.3%へ減少したが、例年同様に高い割合である。「左官」は同1.9%から0.8%へ、「現場監督」は同3.3%から2.3%へともに若干の減少、ほかの職種に関しては増加または横ばいだった。その中でも「基礎」(平成26年4.2%→平成27年5.6%→平成28年6.8%)と「瓦工」(平成26年0.4%→平成27年0.9%→平成28年1.6%)は、発生の割合はともに高くはないが、2年連続で増加していることが懸念される。これらの職種は屋外での作業が大半を占めるため、近年増加している熱中症の予防に具体的な対策を立て強力に推進していく必要がある。また、「その他」が同28.5%(平成26年32.0%)から増加し30.0%に戻ったことが懸念される。これらの職種の大半は、一現場に長期で滞在しての作業を行うことは少なく、多くの現場を巡回する職種のため、現場ごとの作業環境に不慣れゆえの労働災害が発生すると思われる。各現場へ入場するときは、足場掛状況、作業場の整理整頓状況、資材搬入のための通路状況等の把握を行うことを習慣化・徹底する必要がある。

 労働災害発生状況では、[原因・型別]=発生傾向に近年大きな変化は無く、「墜転落」が約50%(平成27年49.1%→平成28年48.0%)、「工具(切れ・こすれ)」が約20%(平成27年20.1%→平成28年22.0%)でこの2項目で全体の70%を占める状況が続いている。「車両系建設機械」(平成27年3.3%→平成28年3.9%)による事故が少しずつではあるが増加していることが平成28年の特徴である。特に重大災害に繋がる危険性が高いクレーン(平成27年7.1%→平成28年15.8%)やドラグショベル(平成27年14.3%→平成28年57.9%)による事故が増えていることが気になる点である。墜転落災害の内訳をみると、「足場」(平成27年21.4%→平成28年19.2%)からの墜転落は徐々に減少しているが、「開口部」(平成27年11.0%→平成28年13.7%)・「ハシゴ」(平成27年9.5%→平成28年11.1%)・「脚立」(平成27年24.8%→平成28年24.4%)からの墜転落が相変わらず多く発生している。特に「脚立」からの墜転落災害は各社様々な取組みをしているが、作業者の不安全行動を改善させることまでには至っていないように思われる。現在、ハーネス型の安全帯使用が検討されているが、全産業における死亡災害の大半が安全帯の不使用によるもので、まずは確実に安全帯の使用の徹底を図ることが急務である。「工具(切れ・こすれ)」の内訳では、「丸鋸」(平成27年30.2%→平成28年34.6%)・「釘打ち機」(平成27年24.4%→平成28年27.1%)による災害が占める割合が高く、増加傾向にあることも気になる点である。 [休業日数別]=この3年間はほぼ同様の傾向にあり、平成28年は31日以上の休業日が全体の46.2%と半数近くを占めている。特に重大な災害につながる「墜転落」、「電動工具」、「車両系建設機械」については元請業者・事業主が協力して労働者に災害防止の重要性について常に自覚を持つように、繰り返して安全衛生教育の実施をすべき。

 [雇用形態別]=平成27年と比較して、「労働者」が63.4%(前年比14.1P増)、「事業主」が3.9%(同4.5P減)、「一人親方」が32.4%(同9.4P減)と、「労働者」の割合が過去10年で最高になるとともに、「事業主」の割合は過去10年で2番目に低く、「一人親方」の割合は過去10年で最低となった。[年齢層別]=平成28年は、前年に比べて30歳代(平成27年19.4%→平成28年18.3%)の割合は減少し、40歳代(平成27年22.9%→平成28年23.0%)は横ばいとなったが、平成27年に減少した20歳代(平成27年10.5%→平成28年13.3%)の割合が増加した。平成28年全体では50歳代(平成27年16.6%→平成28年15.6%)・60歳以上(平成27年26.2%→平成28年25.7%)の割合が減少しているが、50歳代以上では41.3%を占め全体の4割を超える状況は平成27年(42.8%)から変わらない。今後も低層住宅工事に携わる作業者の高年齢化は継続することが予想され、高齢者の災害発生比率の増加が懸念される。

 [月別・曜日別・時間別]=「月別」:5月が10.3%(前年比4.2P増)、7月が9.9%(同1.5P増)・12月が11.3%(同2.4P増)と災害発生率が増加した。これは、工事が集中する年末完工の繁忙と熱中症対策が必要となる5月頃からの急激な気温上昇によるヒューマンエラー(災害の要因となる人的ミス)を起因した災害と推察される。「曜日別」:金曜日が13.3%(前年比1.9P減)、土曜日が14.0%(同1.0P減)、日曜日が1.8%(同1.7P減)は減少傾向にあるが、休み明けの月曜日が20.5%(同3.2P増)、火曜日が18.7%(同1.9P増)と多い割合で発生している。「時間帯別」:午前中の災害発生率が高く、作業開始から昼休み前までの割合が非常に多い。作業前の「躰や精神面の準備不足」、昼休み前の作業者の「疲れ」や「油断」に対して自覚を持つように、繰り返して安全衛生教育の+実施が重要としている。

〔URL〕http://www.judanren.or.jp/proposal-activity/chosa/file/h28_roudousaigai.pdf
【問合先】工事CS・安全委員会03―5275―7251