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平成30年 年頭所感

一般社団法人 全国住宅産業協会

会長 神 山 和 郎


謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
 昨年7月、福岡県と大分県を中心とする九州北部豪雨により、河川の氾濫や土砂崩れによって多くの人的被害、建物被害が発生しました。被災されました方々に心からお見舞いを申し上げます。
 我が国経済は、企業業績や雇用環境が改善するなか、個人消費は緩やかな回復基調にありますが、若年層を中心に消費性向の低下が続いております。本格的な消費者マインドの活性化のためには、将来不安を払拭する社会保障の整備と確実な可処分所得の増加が期待されております。
 住宅・不動産市場は、新設住宅着工戸数がほぼ前年度並みの水準で推移しているものの、実態は相続税対策によって喚起された貸家の供給によるところが大きく、分譲マンションは需給ともに低調な状況が続いております。加えて、建築費が高止まりにあること、事業用地の取得が厳しい状況にあることなどから、一次取得者層を対象とした安定した住宅供給が危惧されております。
 また、1992年に生産緑地として指定された多くの土地が期限を迎え、宅地として一気に住宅・不動産市場に供給されることによって地価の暴落が懸念されておりましたいわゆる「生産緑地2022年問題」への対応につきましては、昨年5月生産緑地地区の買取り申出期日を10年延長できる特定生産緑地制度の創設や面積要件の引下げなどを内容とする生産緑地法等の改正が行われたことによって、安定した住宅・不動産市場の形成が図られることになると思われます。
 さて、本年4月から宅地建物取引業法の一部改正により、既存建物取引時に、宅建業者が、専門家による建物状況調査(インスペクション)の活用を促すことで、売主・買主が安心して取引できる市場環境を整備する規定が施行されます。われわれは不動産取引のプロであることを自覚し、新たな措置内容を着実に履行することによって、既存住宅流通の促進に重要な役割を果たしてまいります。
 現在、空き家、空き地対策については、空き家等対策の推進に関する特別措置法の施行から2年半が経過し、地方公共団体や専門家団体などによる様々な取組みが行われているところです。このような諸活動を踏まえつつ、不動産業界としても積極的な取組みを行う必要があり、特に宅建業者の媒介業務の役割は重要です。しかし、空き家等の低額物件の媒介には現地調査等に費用がかさむことが重荷となり、物件の取り扱いを避ける傾向にありました。こうした状況に鑑み、昨年9月、空き家等の流通を促進する観点から、低額物件を媒介した際の宅建業者の負担の適正化に関する要望書を他団体と連名で国土交通大臣へ提出しました。その結果、本年1月から改正報酬告示が施行され、現地調査等の費用を要するものについては、現行の報酬額の上限に加えて、費用相当額を合計した額を受け取ることができることとなりました。今後、空き家等の流通が活発に促進されることが期待されます。
 一方、喫緊の課題として、特にマンションの空き家問題が懸念されております。建築時期が古いマンションほど空き家率が高く、適切な維持・管理機能が低下し防災・治安・衛生面等の問題が顕在化しスラム化の進行が危惧されています。大規模修繕が困難なマンションは、建替えを促進することが必要ですが、建替えが円滑に進まない理由の一つに多額の費用負担が挙げられます。区分所有者の費用負担を軽減する方法としては、容積率の特例制度(ボーナス)の創設やリバースモーゲージの活用方策について本格的な検討が望まれます。
 昨年12月には、平成30年度税制改正大綱が公表になり、新築住宅に係る固定資産税額の減額措置の延長、買取再販で扱われる住宅の取得等に係る登録免許税の特例措置の延長及び不動産取得税の特例措置の拡充、居住用財産の買換えに係る特例措置の延長、既存住宅の耐震・バリアフリー・省エネ・長期優良住宅化リフォームに係る固定資産税の特例措置の延長、土地等に係る不動産取得税の特例措置の延長などが実現したことは、良質な住宅への円滑な住み替えの促進に大きく寄与するものと思われます。
 言うまでもなく安全・安心で良質な住宅を供給することは、われわれ事業者の責務であり、国民の豊かな住生活を実現するため、全力で取組んでまいる所存です。
 全国の住宅供給を担う中堅企業の統合団体として、会員の英知と熱意を結集し、協会活動の充実に一層努めてまいりたいと存じます。会員ならびに関係の皆様方の倍旧のご支援とご協力をお願い申し上げます。
 最後になりましたが、皆様方のますますのご発展とご健勝を祈念申し上げまして、新年のご挨拶とさせていただきます。