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住宅・建築物のエネルギー消費性能の実態等に関する研究会とりまとめ概要

 国土交通省は「住宅・建築物のエネルギー消費性能の実態等に関する研究会 とりまとめ概要」を公表しました。

1.建築物省エネ法の施行状況
 (1)省エネ適判制度
 大規模(延べ面積2000m2以上)の建築物の新築等を対象とする省エネ適判制度は、確認審査日数の推移が下表のとおりであるなど、これまでのところ省エネ適判に起因する混乱や確認審査の遅延等は発生しておらず、概ね円滑に施行されている。

(表1)省エネ適判の対象となる大規模建築物に係る確認審査日数の推移
表1

【委員からの主な指摘等】
・省エネ適判の審査にあたり判断に迷った案件について、所管行政庁等が実際にどのような論拠でどのような判断を下したかについての情報を所管行政庁等や設計関係者等の間で共有し、手続きの更なる円滑化に繋げていくことが重要。

 (2)届出制度
 省エネ適判対象以外の中規模(延べ面積300m2以上2000m2未満)以上の住宅・建築物の新築等を対象とする届出制度については、届出率は制度創設時より上昇傾向にあるものの、下表のとおり、特に中規模の住宅・建築物において未だ低い水準にとどまっている。

(表2)平成27年度における届出率
表2

【委員からの主な指摘等】
・届出率の向上に向け、制度の周知徹底を図るとともに所管行政庁における無届物件への督促等の取組を推進することや、所管行政庁の業務負担の軽減に向け、審査項目の合理化や申請書類の簡素化等の工夫を行うことが必要。

(3)表示制度
 建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)については、戸建住宅を中心に実績件数が伸びている。

2.住宅・建築物の省エネ性能に関する実態等
 (1)住宅・建築物の省エネ性能に関する実態
 届出結果やアンケート結果より、平成27年度時点の住宅・建築物それぞれの規模別の省エネ基準等への適合率を算定したところ、下表のと
おりとなった。

(表3)平成27年度における省エネ基準への適合率
表3

【委員からの主な指摘等】
・事務局による住宅・建築物の省エネ基準等への適合率に係る算定結果については、概ね実感と合っている。

 (2)設計者等の省エネ計算等への対応の現状
【委員からの主な指摘等】
・業界団体が実施した調査等によると、小規(延べ面積300m2未満)の住宅・建築物の設計・施工を担う中小の工務店や設計者事務所等には省エネ基準や省エネ計算等に習熟していない設計者が相当程度存在している。

 (3)消費者の住宅・建築物の省エネ性能向上等への理解の現状
【委員からの主な指摘等】
・住宅・建築物の省エネ性能向上のメリットが建築主や居住者等に十分に理解されていない。

3.住宅・建築物の省エネ基準への適合率の向上等の課題等
【委員からの主な指摘等】
(省エネ基準適合義務に係る課題)
・省エネ基準の適合義務化の対象拡大にあたっては、省エネ基準への適合状況に加え、省エネ投資の費用対効果の低さやエネルギー消費量の住まい方への依存等の住宅の特性、生産・審査体制、建築主等の認識、伝統的構法や地域の文化への配慮等に係る課題に留意するこ
 とが必要。
(省エネ基準・省エネ計算に係る課題)
・省エネ基準への適合の判断を容易なものとするための省エネ基準・省エネ計算の大幅な簡素化、共同住宅における住棟単位での省エネ基準の適用等が必要。
(省エネ性能向上等に係る普及啓発に係る課題)
・生産者の技術力向上のための講習会等の実施、断熱材等の適切な施工技術の普及、省エネ性能向上の必要性等に係る建築主等への普及啓発の推進等が必要。
(総合的な取組の推進等に係る課題)
・住宅・建築物全体の省エネ性能の底上げとより性能の高いグループの拡大及び性能向上の両面からの施策検討、省エネ性能に関する情報の建築主等への提供の徹底や省エネ性能に応じた税財政・融資上の支援の重点化等の多様な手法によるマーケットメカニズムの活用
 等が必要。
(省エネ性能の情報提供に係る課題)
・消費者の意識の向上や適切な選択を促すための設計者から建築主等への省エネ性能の説明、健康性等を含めた総合的な表示制度の検討等が必要。
(高い省エネ性能を有する住宅・建築物の普及に係る課題)
・関係省庁の連携によるZEH 等に対する支援策の充実、現行の省エネ計算の方法では評価できない新たな技術や設備機器等の評価手法の検討等が必要。
(既存ストック対策に係る課題)
・省エネ性能の低い既存ストックが数多く存在することを踏まえ、既存ストックの省エネ性能向上を促進することが必要。

4.引き続き把握・検証すべき事項
【委員からの主な指摘等】
・今後の省エネ基準への適合率向上等に向けた取組に係る判断を的確に行うためにも、省エネ基準への適合率の最新状況や、地域や構造等の別での不適合物件の要因等について、把握・検証していくことが必要。

●国土交通省(住宅・建築物のエネルギー消費性能の実態等に関する研究会 とりまとめの公表について)
[URL]http://www.mlit.go.jp/report/press/house04_hh_000785.html